《厚生年金と国民年金の平均受給額》老後にいくら貰えるのか?

通帳を見つめる高齢者・年金

年金問題は常に騒がれています。

あるニュースでは公的年金が老後資金で足りなくなる為、2,000万円や3,000万円の追加の老後資金が必要と言われています。

しかし、この金額は全ての世帯には必要ないです。

厚生年金を多く支払っている世帯などは貰える年金も多いため、そこまでの金額は必要ありません。

しかし、国民年金や厚生年金の保険料が少額の方は、確かに多めの貯蓄が必要になります。

今回は、どんな世帯でいくら貯蓄が必要になるのかを具体的にお伝えしていきます。

まずは、公的年金はどんなものかお伝えし、その後に、貰える年金の金額、少ない場合の対策方法をお伝え致します。

公的年金制度の種類とは

年金とマネーの積み木の画像

公的年金には、元々は3つの種類ありましたが、今は2種類になりました。

共済年金が厚生年金に一元化されました。

年金は国内に住所を持っている人は加入しなければいけません。

勤め方によって、加入する年金は変わってきます。

制度​説明
国民年金日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人
厚生年金厚生年金保険の適用を受ける会社、役所に勤務している人
共済年金​厚生年金に合併されました

国民年金と種別とは

国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人が加入しており、老齢・障害・死亡の場合に国から基礎年金を受け取れます。

国民年金には、3つの種類があり、第1号、第2号、第3号被保険者があります。

第1号被保険者

(対象者)
農業等に従事する人、フリーター、自営業者、個人事業主、無職の人などが対象。

(保険料の納付方法) 
郵送されてくる納付書で口座振替などで納めます。
もし、何かしらの理由があり、納められない時は、免除や猶予が受けられます。

第2号被保険者

(対象者)
厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する人。
厚生年金に加入していれば、国民年金も加入しています。

(保険料の納付方法)
厚生年金保険料の中に国民年金の保険料も入っています。
厚生年金の加入者は国民年金入っており、国民年金に上乗せして厚生年金に入っているイメージになります。

第3号被保険者

(対象者)
第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人です。
配偶者であっても、年間収入が130万円以上ある場合で、健康保険の扶養から外れる人は第3号被保険者にはなれずに、第1号被保険者か第2号被保険者になります。

(保険料の納付方法)
3号被保険者は配偶者の厚生年金が年金の支払いを負担して支払っています。

厚生年金の仕組み

厚生年金の加入者は、国民年金にも加入している第2号被保険者になります。

国民年金の基礎年金にプラスして、厚生年金を受給できます。

年金制度の体系図の説明
年金制度の体系図 国民年金基金から抜粋

共済年金とは

厚生年金に合併された共済年金制度は、公務員や私立学校教員に勤めている人が組合員になります。

名称​対象者保険者
国家公務員共済組合常勤の国家公務員等各省庁の共済組合
地方公務員等共済組合常勤の地方公務員等各地方公共団体の共済組合
私立学校教職員共済組合私立学校勤務の教職員日本私立学校振興・共済事業団

共済年金は現在は厚生年金に統合されています。

平成27年10月1日以降の受給は厚生年金になります。

平成27年9月30日以前に受給している場合は、共済年金のままにです。

共済年金と厚生年金の一体化は下記の記事を参考にしてください。

国民年金と厚生年金 平均の受給額

老後にいくら公的年金をもらえるか貰えるかは皆さん気になるところです。

共働きの世帯も増えているので、年金の受給額は家庭によって変わってきます。

今回は夫婦の働き方4パターンに分けて、年金予想額をご紹介します。

老後の年金受給額の目安 4つパターン

ここでは、夫婦ともに現在40歳で65歳から年金を受給する場合で説明致します。

前提条件の年収は、平均年収の男性531万円、女性287万円で計算します。

年金の支給額は2019年時点の数字ですので、将来的に減額する可能性が高いので、余裕を持って老後資金の積み立てや投資をして下さい。

①夫または妻のみ働いている場合(勤め人)

夫婦の貰える年金額合計:毎月24万円

年金額内訳

夫:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 9万7,500円/月

妻:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 1万2,500円/月

前提条件:夫は20歳~60歳まで会社員で平均給与44万2,500円
    :妻は20~29歳まで会社員で平均給与23万9,200円。30歳~専業主婦

②夫も妻も働いている共働き(会社員と会社員)

夫婦の貰える年金額合計:毎月28万円

年金額内訳

夫:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 9万7,500円/月

妻:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 5万2,500円/月

前提条件:夫は20歳~60歳まで会社員 平均給与44万2,500円
    :妻は20歳~60歳まで会社員 平均給与23万9,200円

③ 夫もしくは妻のみ自営業で働いている場合

夫婦の貰える年金額合計:毎月14万2,500円

年金額内訳

夫:老齢基礎年金 6万5,000円/月

妻:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 1万2,500円/月

前提条件:夫は20歳~60歳まで自営業
    :妻は20歳~29歳まで会社員 平均給与23万9,200円。30歳~専業主婦

④ 夫も妻も働いているがどちらか自営業の場合(自営業と会社員)

夫婦の貰える年金額合計:毎月18万2,500円

年金額内訳

夫:老齢基礎年金 6万5,000円/月

妻:老齢基礎年金 6万5,000円/月
 :厚生年金報酬比例部分 5万2,500円/月

前提条件:夫は20歳~60歳まで自営業
    :妻は20歳~会社員 平均給与23万9,200円

夫婦2人の老後生活費は年間約350万円必要

総務省が2018年に発表した「家計調査年報」を参考にすると、夫婦2人世帯の老後の生活費は、年齢によってわかれますが以下の通りになります。

60~69歳まで:29万1,019円/月 年間約350万円

70歳以上:23万7,034円/月 年間約284万円

上記は平均になりますので、
ゆとりのある老後をおくる場合は
平均36.1万円/月 平均433.2万円/年の生活費が必要になります。

この夫婦が仮に60歳で定年して、女性の平均寿命の88歳まで生きた場合、平均での生活費は下記の計算で求められます。

(29万1,019円×12ヵ月)×10年+(23万7,034円×12ヵ月)×19年=8,896万6,032円

夫婦2人世帯における老後の平均的な生活費は88歳まで生きた場合、
総額は約8,900万円になります。

老後の公的年金はいくら不足になるのか?

はてなマークで悩んでいる女性

上記の①~④のパターンで夫婦が受給する年金と、年金総額から老後に必要な生活費8,896万6,032円を引いた際に、どのくらい老後資金に不足が出るのかを下記に分けました。

パターン①不足金額

会社員と主婦のケース

貰える年金額6,912万円【88歳まで】=24万円×12ヵ月×24年

老後資金不足額:1,984万6,032円

パターン②不足金額

夫婦ともに会社員のケース

貰える年金額8,064万円【88歳まで】=28万円×12ヵ月×24年

老後資金不足額:832万6,032円

パターン③不足金額

自営業と主婦のケース ​

貰える年金額4,104万円【88歳まで】=14万2,500円×12ヵ月×24年

老後資金不足額:4,792万6,032円

パターン④不足金額

自営業と配偶者が途中まで会社員のケース

貰える年金額5,256万円【88歳まで】=18万2,500円×12ヵ月×24年

老後資金不足額:3,640万6,032円

老後の不足資金 総括

主に稼いでいる人が厚生年金保険に加入していない場合(このケースだと③と④になります)の夫婦の老後資金不足額は約4,800万円、約3,640万円とかなり不足分が大きくなります。

老後の生活費を貯蓄する際に退職金などを考えている人もいますが、たとえばパターン②は夫婦2人分の退職金が期待できますが、パターン①と④では1人分となりパターン③では退職金は期待できません。

退職金と同額の資金を前もって準備することが非常に重要となります。

老後資金の対策「つみたてNISA」と「iDeCo」

資金の貯め方には色々な方法がありますが、国が推奨をしている老後資金の作り方は「つみたてNISA」と「iDeCo」になります。

なぜ推奨しているかは、この二つは税制面でかなり優遇をされているからです。

他にも小規模企業共済や不動産投資もありますが、今回はこの「つみたてNISA」と「iDeCo(イデコ」を紹介します。

まずはそれぞれを運用した場合、どれくらい老後資金に寄与できるかをお伝えします。

個人事業主や社長は下記の記事も参考にして下さい。

つみたてNISAは投資信託で年間最大40万円が運用可能

つみたてNISAは投資信託で年間最大40万円が運用可能

つみたてNISAはローリスクでの投資となり、毎年40万円を最長20年、運用益が非課税で投資できます。

つみたてN IS Aの運用は投資信託だけで、毎月一定の金額を自分で決めた投資信託に投資していきます。

例えば2020~2037年の18年で、毎月3万3,000円を年率3%で運用できれば2037年には約943万円が用意できます。
(複利計算になりますので、初期に積み立てをした金額ほど時間をかければ金額は大きくなります。)
単純に3万3,000円を18年間貯金した場合は約712万円になります。

夫婦で積み立てれば約1,886万円になります。

デメリットは元本割れをすることもあるため、投資だけをあてにしてはいけません。

※年率は固定された利率ではないので、実際の利率は上下します。売却時には、投資信託の値段が下がり損失になる場合もあります。

NISAについては、下記の記事で詳しく解説しております。

iDeCo(イデコ)は自分で運用する老後の年金

iDeCoは個人型確定拠出年金の通称になります。

掛金の金額を自身で選択することができ、運用方法を複数の選択肢から選ぶことができます。

つみたてNISA同様、運用益が非課税になりますが、国民年金の加入区分ごとに掛け金の上限は決められています。

自営業者は月額で6万8,000円の掛け金、会社に企業年金がない会社員の場合は月額2万3,000円の掛け金、専業主婦(夫)の場合は2万3,000円の掛け金が限度額となります。

もちろんiDeCoも元本割れする可能性はあります。

例えば、40歳からiDeCoに限度額の掛け金を支払い、60歳になるまで年率で3%の運用した場合のシミュレーションは、60歳でのiDeCo残高は自営業者の場合に約2,200万円、会社員では約755万円が用意できます。

最も老後資金が不足していたパターン③の夫婦の場合でも夫婦が二人とも、つみたてNISAとiDeCoを限度額まで活用していけば、不足分はなんとか補充できます。実際には、そこまでの貯蓄は大変ですが。

1,886万円(つみたてNISA)+2,200万円(自営業のiDeCo)+755万円(主婦のiDeCo)=4,841万円が用意できます。

老後資金をためるには、時間を味方につけることが大切です。

たとえば59歳になって、後1年で不足分を補えるのかと言われたら難しいのはわかりきっています。

長い年月をかけて少額を積み立てていくのが賢い貯蓄といえます。

イデコについては、下記の記事で詳しく説明しております。

老後資金は年金受給額にあわせて早めの準備を

家族で営業マンの話を聞いている画像

4つのパターンで年金受給額の目安と老後資金の不足額を紹介しました。

再検討した方がいいのは、自営業の家庭と専業主婦(夫)の家庭では老後資金は、早めに準備するか、貯蓄の見直しをしていくことが大切です。

老後資金を作り上げていくために、iDeCo、つみたてNISAなどの制度がありますが、計画的に運用することが必要です。

無理して掛け金を増やしていけば、もちろん普段の生活費に支障がでます。

しっかりと事前にいくらぐらい必要なのかを計算し、できれば20年以上のスパンで開始することが望ましいです。

子育てに費用が掛かる際は掛け金を少なくするなどの調整を行い、無理のない準備をしましょう。

老後資金がどうしても足りない場合の対策方法

老夫婦が財布を持ってはてなマークを浮かべている

老後資金がどうしても貯まらない場合の3つの対策方法をお伝えします。

老後資金が2,000~3,000万円必要といわれても、多額の資金を準備するのは難しいと思っている人がほとんどです。

そんなときの対策方法をご説明します。

1. 老後も働く

これから2,000~3,000万円の資金を用意するのが困難な場合には、定年退職した老後も働くことが対処方法としては確実でしょう。

不足する2,000万円は短期間で必要な金額ではない為、仮に年収300万円の仕事だとしても5年働けば1,500万円、10年だと3,000万円の収入になります。

会社に勤めている人であれば、希望すれば再雇用制度により65歳まで働ける場合もあります。

今後は70歳まで働く可能性も示唆されています。

他にも、今まで培ってきたキャリアを活かし、フリーランスとして起業するのも一つの考えです。

老後に新しいことを始めるのであれば、現役時代から十分に勉強や準備をしておくのが大切です。

国の制度で、文部科学省は、大学・大学院・短期大学・高等専門学校における学び直しを推進しており、職業実践力育成プログラム(BP)制度を設けています。

文部科学大臣が実践的・専門的なプログラムになっている講座は、厚生労働省から補助金が支給されるため、自身の仕事と合致する講座があった際には、この制度をぜひ活用して定年後の仕事に役立てて頂きたいです。

2. 保険や通信費などの固定費を見直す

収入を増やすことが難しい場合、仕事を退職するまで現在の生活水準を下げておくのも有効な対処法になります。

特に光熱費や水道費、通信費など、毎月かかる固定費は無駄があれば意識して削減することで日ごろから節約を行っていきたいです。

他にも外食費なども大きな負担になっている場合があります。

また定期的に見直して欲しいのが保険です。

5年や10年で一定年数ごとに保険料が上がる定期型の医療保険は、60歳を越えると支払額が高額になるケースがあります。

保険料が一定の保険か、保険以外の方法でカバーできないのかを検討してみましょう。

保険については、積み立てと掛け捨てのどちらが得かを下記記事にて詳しく説明しております。

3. 持ち家などの保有資産を有効に活用する

自宅を持っている場合で、老後資産がどうしても不足する際には、リバースモーゲージという制度があります。

聞きなれない制度だと思いますが、簡単にご説明すると。

自宅を担保にして金融機関から借金をして、そのお金を毎月の年金として受け取るものです。

基本的には、毎月利払いのみになるので元金の返済が契約者が亡くなった後、金融機関が家を競売にかけて元金返済を行います。

結果として自宅を手放すことになりますが、契約期間中は自宅に住み続けることができることは大きなメリットです。

契約者が亡くなった後に、相続人が借金の返済をした場合には、家を売却する必要はなくなります。

今の家にこだわりがない人であれば、家を売却して売却したお金で夫婦2人に適した広さのマンションに住む選択肢もあります。

また、将来子どもが実家に戻って来る可能性が少ない夫婦も家の売却も選択肢に入れてもいいでしょう。

より交通の便がいい場所に住み替えを行うなども選択肢の一つです。

逆に、物価の安い地方に移る選択肢もあります。

地方では高齢者に住んでもらうことに力を入れている地域もあります。

老後は地方でのんびりスローライフという考えもあります。

リースバックという制度もあります。

これは、自宅を売却して、売却した先から賃貸で部屋を借りることができる制度になりますが、売却した金額の1/10がおおよその年間家賃となるため、本当に一時的にお金を借りる意味合いが強いです。

リバースモーゲージとリースバックについては下記の記事で詳しく説明しております。

まとめ

老後資金を確保するために重要なことは、今現在できるだけ早く家庭に必要な老後資金をシミュレーションしてみることです。

人によって老後に対する考えは違います。

老後に生活の水準を下げることは困難で、新しい職務をすることも若い頃に比べて難しくなります。

老後生活がいざ始まって、資金が足りないことに気づくのでは対応できる範囲がかなり少なくなります。

できる限り早い段階で、準備を始めて、時間を味方につけて老後に挑むのが、将来的に苦労をしなくていい方法です。

今の生活で手一杯だよと思う方もいますが、日々の生活費の見直しを行い無駄な支出を見直して、その余剰資金をiDeCo(イデコ)や積立NISAに投資するのも一つの検討材料になります。

確実に老後資金になりますので考えていきましょう。

・年金
スポンサーリンク
FPヒロナカの得する不動産とお金の話

コメント