賃貸住宅は長く住めば【時効取得】で自身の所有にできるのか?

権利で住宅を縛るイラスト ・不動産 豆知識

時効はドラマでも、ニュースでもよく題材にあがる名称なので、馴染みがあると思いますが、刑事事件であれば1~30年で殺人事件以外は時効です。

土地や建物の時効取得では、一定の時期を超えて所有の意思を持って、その場所に居座って(占有)していれば、自身の所有にしてしまう事が出来てしまいます。

簡略して伝えすると、他人の土地建物を自分の物にする事が出来ます。

時効取得とは?

時効は、土地や建物を占有しているという意思を持って、10年もしくは20年以上、占有している場合に、所有者以外の占有者が時効取得する事が出来ます。

ただし、占有者が所有の考えを持って、当該土地建物が他人の物だと知っている(悪意)と知らない(善意・無過失)ケースで時効取得が成立する期間が異なってきます。

占有中に真の所有者が立ち退き請求をしてこない、他人から見て占有者が所有してると見える状況などの条件が要ります。

法律用語で言うと、平穏かつ公然に占有をしている状態です。

自分のモノでないと知っている(悪意)ケースでは、20年以上継続して平穏かつ公然と占有して、時効取得出来ます。

対して、他人のモノだと知らない(善意)で当該土地建物が自身のモノだと思って、平穏かつ公然に占有した場合には10年以上と短い期間で時効取得出来ます。

善意のケースでは、占有を開始した時が善意で始まったかで条件を満たします。

途中で当該地が他人のモノと気づいても、当該地を占有し続ければ、変わらずに期間は10年です。

民法 第186条 
占有の態様等に関する推定
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
前後の両時点で占有をした証拠があるときは、占有は継続したものと推定する。

善意の場合には民法186条が使われますが、無過失は上記の法律は適用されません。

そして、善意だと主張する占有者は、当該地の占有が無過失である事を自身で証明します。

裁判では、無過失が論点となって争われるケースが多いです。

所有の意思は何を指すのか

時効取得を望む人は、所有の意思の有無を立証する必要は無いです。

取得時効の争いでは、本当の所有者側が占有者に、当該地の所有の意思が無い事を立証する必要が出てきます。

悪意、善意は占有を取得する際の原因、および、占有中の状況などを勘案して客観的に決められます。

時効取得を争う元の所有者は、占有者が賃借等、つまりアパートや借家などで所有の意思が認められない(他主占有権原)、もしくは、所有の意思が無いと判断される状況(他主占有事情)を主張立証しなければ、借りてる人が所有の意思があったと認めたと言う事になってしまいます。

賃貸の時効取得は出来るのか?

頭を抱える女性

賃貸は賃借人(借りている人)、もしくは、受寄者(預かっている人)などの、将来的に所有者に借りているモノを返さなければいけないので、所有しているという考えは認められません。

なので、賃貸物件で賃料などを支払い続けている場合は、時効取得は出来ません。

他主占有事情

所有者にふさわしくない行動をしている場合や所有者として取るべき行動をしてない等が挙げられます。

例えば、固定資産税の支払を行って無い場合です。

固定資産税は登記簿などの所有者に支払いの請求がありますので、この支払をしていない場合は所有者としての意思が無いとみなされます。

平穏かつ公然とは

こちらも占有者が立証する必要がなく、真の所有者が立証しなければいけません。

例えば、占有者側から、強迫などによって占有を開始や維持した場合、当該占有を隠して行っていたことを立証すれば、時効取得を阻止する事が出来ます。

時効取得で所有権を変更をする方法

時効取得で、土地建物を取得した際に、登記は変更しない限り前所有者の名義の状態が続きます。

前所有者が登記変更に応じて頂ければ、個人でも法務局に登記変更の申請をするだけなので、簡単に所有者変更が出来ます。

もし、前所有者が非協力的な場合は、通常の登記変更は出来ないので所有権に基づく移転登記手続請求の裁判をします。

市や国の所有地は時効取得出来る?

シマウマと小鳥がはてなマークのイラスト

国などの公共機関の土地は、時効取得出来る時と出来ない時があります。

具体的には、現況がその公有地の用途として機能しておらず、敷地の中で公然と敷地所有者に占有がされている事があります。

よくあるのが、法務局で管理している、境界を示した公図上で敷地を分断して水路や道がある土地があり、現地は家が建っており水路や道がない状態です。

これは明らかに、水路や道が遠い昔に無くなっているので取得が出来ます。

ただし、公有地に関しては、敷地を買い取りです。

市や県、国に対価であるお金を出して、敷地所有者が買い取ります。

買い取りが出来ない場合は、現地に水路であり、その水路の上に自宅を建てている際には、家の下に水路があるので取得は出来ません。

まとめ

時効取得は、取得される側からしてみれば、自身の財産を無償で渡さないといけない為、認めたくないのが通常です。

なので、ほぼ確実に裁判に発展します。

時効取得する場合は、しっかりと証拠などを揃えて勝てる準備をしましょう。

負けた場合は立ち退きを迫られます。

土地所有者は時効取得の請求をされる側であり、突然の請求です。

自身で解決するのは、難しいので弁護士などにすぐに相談をしましょう。

コメント