無断転貸とはあまり聞きなれないと思いますが、所有者に黙って、他人に自身が借りている部屋、土地などを貸し出すことです。所謂、又貸しと呼ばれるものになります。
所有者としては、賃貸人に貸しているのにまったく違う人が黙って使っていると困る場合もあります。
法律では、賃貸借契約を即時、解約できるケースもあるのでお互いに注意が必要になります。
無断転貸とは
民法では、賃貸借契約を行っていれば、賃借人(入居者)は賃貸人(大家)の了承を得なければ、民法612条で賃借権の譲渡、転貸ができないことが明記されています。
仮に、賃貸人の承諾を得ないで、他人に転貸した場合は、賃貸人(大家)側は賃貸借契約を解除することができます。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
政府の電子窓口 民法参照
賃貸借契約の解除に関する理論として、信頼関係破壊理論と背信行為論があります。
この2つは実質的に同じ意味合いですが、解除が認められるかどうかという論点で基準となります。
信頼関係については、当事者間の信頼関係が破壊された場合に限って解除が認められるといわれています。
最二小判昭和27年4月25日は、「およそ、賃貸借は、当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから、賃貸借の継続中に、当事者の一方に、その信頼関係を裏切つて、賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には、相手方は、賃貸借を将来に向つて、解除することができるものと解しなければならない」としています。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57129
裁判所
無断転貸の場合には解除できるという判例があります。
最二小判昭和28年9月25日は、「賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物の使用収益を貸し出した場合に、それが背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては、同条の解除権は発生しないものとする」と判決を出しています。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56009
裁判所
しかし、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときには、例外として賃貸人は民法612条2項により契約解除が出来ないとも書かれています。
信頼関係が破壊されているかどうかが、論点となります。されていない事を立証するのは、借主(入居者)側になります。
ちなみに、特段の事情は、親族をやむを得ない事情などで一時的に転貸するなどが認められますが、赤の他人に事業目的で貸し出すことは認められません。
契約解除後の立ち退き
無断転貸をし、信頼関係を破壊した、無くなったと明らかなケースでは、賃貸借契約は解除することができます。合意の上の解除でない場合は、転借人(又貸しで借りている人)に対して建物明け渡し請求をすることができます。
例えば、賃貸借契約を解除せずに、転貸人(又貸しで借りている人)のみに、建物明け渡し請求をすることもできます。
昭和26年5月31日判決では、賃貸借契約が解除された場合、転借人は建物を使用する権利がなくなります。そのため、賃貸人は転借人に対して建物の明渡しを求めることができます。
また、契約が解除されていない場合においても、賃借人は、転借人に対して直接明渡しを求めることができます。
無断転貸を放置した場合
無断転貸が行われていても、賃料が毎月入ってくれば問題ないと考えている人もいますが、
例えば、転貸人が反社会的勢力の人が借りることや、違法なことに使用される場合もあります。
通常で、借りることができないので、転貸で借りる人も中にはいます。
この様な人が入居している場合は、賃貸物件であれば他の入居者に迷惑がかかる可能性があります。
現状では、大丈夫と思っていても問題が潜んでいるかもしれません。
まとめ
無断転貸は、する側もされる側もリスクを伴いますので、賃貸借契約をする際は特約などに必ず明記していきましょう。
管理会社などに任せている場合でも、しっかりと管理会社が物件を管理していることを確認していきましょう。
近隣からのささいなクレームなどで転貸が発覚する場合もあります。
転貸した側は、親族などに一時的に貸している場合以外は、素直に非を認めて謝罪することから始めましょう。
無理に争っても、高確率で敗訴します。
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