民法改正【相続で二重課税】争続で遺留分請求があると譲渡所得税も支払う?

民法改正【相続で二重課税】争続で遺留分請求があると譲渡所得税も支払う?・相続について

相続をする際に、近年では多くの家庭が揉めています。

今回の民法改正では、相続をした際に遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)をした場合には、相続税と譲渡税が二重で課税されるようになりました。

簡単にお伝えすると、相続した財産には相続税、遺留分の請求をした場合には、譲渡することになるので、譲渡税が別々に課税されます。

もちろん全額が税金の対象になることはありませんが、今までよりも増税されることは間違いありません。

どんな状況で増税されるのか確認をしていきましょう。

民法改正とは

民法改正とは

毎年の税制改正も大変です。

今年の税制改正でも複数の項目が変更しています。

さらに、税法以外にも約40年ぶりに民法改正も行われました。

ほとんどの法律が民法を土台にしている状態なので、その影響は計り知れません。

例えば、今回お話する二重課税ですが、従来は相続税だけの納税で終わっていましたが、令和元年7月1日以降の相続では譲渡所得税を加えた二重課税になる可能性があるので注意してください。

相続発生後の遺留分請求

相続発生後の遺留分請求

具体例をあげて、ご説明します。

令和1年の7月1日以降に、被相続人である父が亡くなり、相続が発生しました。

母もすでに他界していて、後継者は、亡くなった父の唯一の財産である家1軒、相続税評価額2億円(土地を売買した際はより高額になるでしょう。)を故人の希望で相続したケースです。

もう1人の相続人である、妹はすでに嫁いでいることもあって、少しばかりの遺品を相続させる旨の遺言が残されていました。

ところが、妹は、「法定相続分の2分の1ではなく、更に半分の4分の1の遺留分があるはず!」

と思い、遺留分を請求してきます。

5千万円を請求する遺留分侵害額請求

5000万円を請求する遺留分侵害額請求(前は遺留分減殺請求)

よくある話です!私もよくどうしようと相談されたことがあります。

私の家はないよと思っていても、いざお金が貰えると分かれば人は簡単に変わります。

また、身内の配偶者など、姻族関係の人がよく問題になります。

遺留分の請求があった場合、民法改正の令和元年7月1日以降の相続では、この遺留分5千万円を現金で妹に払わないといけません。

実際に、5千万円の現金は通常であれば、用意が出来ません。

もちろん、相談の上で納得すれば、現金でなくても大丈夫です。

所有権を一部譲ることもできます。

評価額2億円所有権を4分の1に分け、共有財産(5千万円)として、名義を1/4妹に渡します。

しかし、共有名義になって困ることも多いです。

安易にこの選択を取るのも危険ですからご注意ください。

令和元年6月までの相続であれば、1億5千万分と5千万を二人が別々に相続税を納税すれば終わりでしたが、令和元年7月1日以降の相続では、相続税及び譲渡所得税も両方を支払うことになります。

物で支払うと、その物を妹に売却して払ったことになるからです。

民法改正で、遺留分の請求の名称は遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変わりました。

侵害(額)ですから(お金)で支払うことになったのです。

改正前であれば、物件的請求権で分割協議の中で決めるのであれば、家の共有の所有権で分けても、当事者同士が合意すればお金で支払ってもいい。

あとは相続税を支払えば大丈夫だったのです。

改正後は権利も金銭的請求権となり、分割協議で決めたものは金銭で支払うことに変更になりました。

お金がないから家の持分を相続させるとした場合には、相続手続きと見られずに、民法上の【代物弁済】になってしまいます。

代物弁済とは、お金での支払いに代わって、もので支払うということです。

以前は、相続での分割で同じことができましたが、改正後は代物弁済で相続とは関係なく考えられる様に変わりました。

代物弁済を利用することでの問題点

代物弁済を利用することでの問題点

所得税法33条には譲渡所得が規定されています。

譲渡所得は、売買以外にもかかってきます。

贈与などの売買以外でも譲渡所得として課税されるのです。

代表的なものが代物弁済です。

金銭の支払いができない。そこで物での支払いに代えて弁済をします。

物を売却して、お金にして渡したのと同じになります。

なので、税法では代物弁済は譲渡となり、譲渡所得税の課税対象になってしまいます。

1億5千万円分に対する相続税と、5千万円の譲渡税が課税対象になります。

(これは相続なので。実際には妹に渡してないのですが、渡したことによって妹からの請求に答えるわけですから)

について、相続税だけではなく、譲渡所得税も納税する必要が出てきます。

これが、冒頭でお話した二重課税です。

二重課税、譲渡所得税はいくらになる?

二重課税、譲渡所得税はいくらになる?

譲渡所得税額は相続税とは別に納税する必要が出てきて、どのぐらい納税が必要か計算をしますが、実は、これがけっこう複雑なのです。

譲渡所得は以下の計算式になります。

譲渡所得の金額=収入-(取得した費用+譲渡にかかる費用)

2億円の遺留分4分の1で5千万円を妹に譲渡したケースでは、「不動産を妹に売却して渡した」となるので、収入は5千万円です。

(実際は、売買していないのに、5千万円分の売却をしたとみなされるのです。)

取得費(経費)は入れれるの?を考えることになります。

通常では、取得費は被相続人の取得費+相続税の取得費加算額(支払った相続税の一部をこの取得費に加算できる特例がある)を控除できますが、今回のように相続で取得した中古の家では、何十年も前ですと、取得金額もわかりませんし、何千円で購入していたかもしれない時代です。

その様な場合に、譲渡金額の5%を取得費として見なすことが出来ます。

その5%を差し引き、譲渡金額の約95%(譲渡にかかる費用も経費計上が可能)が課税対象です。

譲渡所得にかかる税率は20.315%(所得税15%+住民税5% 復興税もあります)ですから、ざっと900万円ほどの所得税・住民税が課税されてしまいます。

共有持分にしないために!

共有持分を避けるには?

共有名義の不動産になると、後日売却する場合に共有者全員の同意が必要となって面倒です。

なるべく単独所有にしたいと考えるでしょう。

例えば、相続した家が共有になることを避けるために、相続財産ではなく自分個人の財産で、相続税評価額7千万円の不動産を代わりに妹に渡す選択もできます。

この場合、譲渡所得の収入金額は7千万円とはならず、前述した5千万円が収入金額になります。。

これは7千万円の価値があるものを5千万円で売ったことと同じになります。
(ほかに売却して、現金で払うこともできます)

妹は7千万円の評価額のものを5千万円で買えたことになります。

差額2千万円は妹が贈与を受けたことになるので、家族間の贈与税が、妹の方に課税されます。

別のケース妹の遺留分が1億円では、そんな大金も資産も持っていない場合に、相続財産の2億円の実家の中で5千万円の共有持分で納得して貰った場合。

譲渡所得の譲渡金額は1億円となります。

5千万円の評価の物が1億円で売却できたのと同じになります。

難しいですが、遺留分というものが、債権と同様に見られるので、この様な状態になっています。

もっと良い手段はないの?

要するに、遺留分侵害額請求がなされないようにすれば良いのです。

そうすれば二重課税の心配はなくなります。

先のような父の遺言があったとして、相続人全員で話し合い納得のいく形にすること、揉めないのが一番です。

全員で遺産分割協議をしてあなたが1億5千万円、妹が5千万円の共有資産にすれば、遺留分請求などは起こりません。

もし、共有は必ず回避したいケースであれば、遺産分割協議書に、あなたは実家を相続して、妹には5千万円をお金で払います。

(銀行で借りるにしても返済が大変です。なので、このタイミングで土地を売却される方も多くいます。)

相続税の二重課税 まとめ

相続税の二重課税 まとめ

実際に相続が起きた場合、起きそうな場合を早めにプロに相談することが重要となります。

一番は、生前から親子で揃ってプロに相談を行い、万が一に備えていくことが大事です。

問題が起こってからでは、対処ができない場合も多くあります。

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