祖父母から、孫に対しての教育資金は常識の範囲内での都度贈与は非課税になりますが、自分がどこまで元気でいられるか分からない状態で、孫に一括で教育資金の援助をしたいと考えている人も多いでしょう。
そんな時に使えるのが、教育資金贈与の非課税制度になります。
その都度で行う贈与の非課税と教育資金の一括贈与の違いをわかりやすく解説していきます。
その都度贈与の非課税枠
扶養義務者より扶養されている人で生活費、教育資金のために、贈与を受けた場合に通常必要と認められるものには、贈与税は非課税になります。
扶養義務者とは、次の者をいいます。
① 配偶者
② 直系血族及び兄弟姉妹
③ 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
④ 三親等内の親族で生計を一にする者 なお、扶養義務者に該当するかどうかは、贈与の時の状況により判断します。
生活費とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費は除く)をいいます。
また、治療費や養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補填される金額を除く) を含みます。
教育費とは、被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資、 教材費、文具費等をいい、義務教育費に限られません。
国税局サイト抜粋
外部リンク:国税局PDFデータ
教育資金贈与の非課税制度とは
正式名称は「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」になります。
長いので、一般的には、「教育資金贈与の非課税制度」と呼ばれることが多いです。
教育資金贈与の非課税制度は、祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合に、一定の要件を満たすと、贈与税が非課税になる制度のことです。
非課税対象額は最大で1500万円までとなり、受贈者の年齢が30歳までに教育資金として使った金額だけがこの制度の対象になります。
教育資金の都度贈与のメリットとは?
大学に入学する際にかかる入学費用などの贈与する場合には、その資金を都度贈与した時には非課税です。
この制度を利用するメリットは、贈与した財産の価額が相続税の課税対象になりません。
よく似ている制度の相続時の精算課税制度とは違う点にもなります。
都度贈与の場合は贈与者の生前は非課税ですが、亡くなった時点で相続の対象となり、また、亡くなる前の3年以内に贈与した財産は相続税に加算されます。
教育資金贈与の非課税制度を使った場合、贈与者が亡くなっても3年間遡って相続税に加算されることはないです。
ただし、この制度を利用した贈与金額は、財産教育資金としてしか使えないように制限がかけられます。
教育資金贈与の非課税制度のデメリットとは?
教育資金贈与の非課税制度は5つのデメリットがあります。
1. 30歳で残った部分は贈与税が加算される
受贈者が30歳時点で残高がある場合は、受贈者の所有財産となり、使用用途の縛りはなくなりますが、贈与税が加算されます。
教育資金贈与の非課税制度を利用する場合、制度の利用開始当初は20歳未満であっても、30歳になり残りの部分を贈与で受ける時には20歳以上になっている、
この場合は、20歳以上として、直系卑属に対する特例贈与の税率で課税されます。
贈与の計算は下記記事で説明しております。
2.金融機関と教育資金管理契約を締結する
教育資金一括贈与の非課税制度は、信託銀行や銀行と、教育資金管理契約を締結する必要があります。
この契約は、贈与者でも受贈者でもどちらでもできます。
贈与者が契約する時は、信託銀行等と締結しますが、受贈者が契約する時は、信託銀行ではなく、街にある銀行か、証券会社と結ぶことになります。
通常は、証券会社であまり使用されていないので、銀行で結ぶ人が多いです。
3.払い戻しができない
この制度は信託銀行等を通して、教育資金を受贈者に贈与します。
30歳までに使用しなかった金額を贈与者に返すことはできません。
受贈者も30歳に達するまで、基本的に口座を解約することはできません。
4.別目的の使用は贈与税の課税対象
教育資金贈与の非課税制度で、贈与を受けたお金を教育以外で使った場合には、教育資金管理契約の終了後に贈与税の課税対象になってしまいます。
5.領収書などで教育資金に使ったことを証明する書類の提出義務
教育資金に使用した証明として、領収書などを提出する義務が生じます。
教育資金贈与の非課税制度には期限がある
教育資金贈与の非課税制度の適用期限は令和3年3月31日です。
金融機関と教育資金管理契約を締結して制度を適用させる期限が、令和3年3月31日であって、その時までに教育資金として使わないといけない期限ではありません。
教育資金贈与の非課税制度の使える対象は?
教育資金贈与の非課税制度は、受贈者が30歳までに教育資金として使用したものが対象になります。
最大で1500万円までという限度額が設定されています。
学校以外に使う金銭は、1500万円のうち500万円までは使用できます。
学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所が学校に含まれます。
学校のお金で対象になるもの
学校等に対して直接支払われる次のような金銭
① 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
<「学校等」とは>
・学校教育法上の幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学 校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校、各種学校
・外国の教育施設
〔外国にあるもの〕
その国の学校教育制度に位置づけられている学校、日本人学校、私立 在外教育施設
〔国内にあるもの〕
インターナショナルスクール(国際的な認証機関に認証されたもの)、外国人学校(文部科学大臣が高校相当として指定したもの)、外国大学の日本校、国際連 合大学 ・認定こども園又は保育所など
学校以外の対象になるもの
学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの
<役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③ 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④ スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他
教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤ ③の役務提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<物品の販売店などに支払われるもの>
⑥ ②に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
⑦ 通学定期券代
⑧ 留学渡航費、学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費通学定期券代、留学のための渡航費などの一定の交通費
外部リンク (「教育資金」及び「学校等の範囲等」) 令和元年7月1日現在 (PDF:494KB) PDF文部科学省
少額は領収書の提出自体が不要になる
領収書等に記載された支払金額が1万円(税込)以下で、その年中における合計金額が 24 万円(税込)以下 のものについて、領収書に代えて支払年月日、支払金額等を記載した明細書を作成することで簡略化されました。
教育資金管理口座から直接、学費などの振替はできません。
契約終了はどんな時に?
教育資金管理契約は、下記のどれかになった場合は契約終了になります。
1.受贈者が亡くなったとき
受贈者が亡くなった場合も、契約は終了します。
口座に残高がある場合、贈与税は課されません。
受贈者の遺産となるため、受遺者の相続人に対して相続税の対象となります。
2.預貯金がゼロになり、契約を終了させる合意があったとき
預けている贈与資金がゼロになっても、勝手に契約は終了しません。
贈与上限である1,500万円までは贈与することができます。
また、契約終了の申し入れを受託者が金融機関すれば契約を終了することができます。
3.受贈者が30歳になったとき
この制度は30歳までに贈与をした金額が非課税になるため、30歳になれば契約は終了します。
仮に、当初1,500万円預けており、残高がある場合には贈与税の課税がされます。
制度の限度額はいくらまでか?
この制度が使えるのは、受贈者一人につき、最高1500万円までです。
複数の人から贈与があっても受け取る人の限度額で制限をされます。
なので、複数にこの制度を利用した場合には、それぞれに1,500万円ずつ贈与することができます。
まとめ
教育資金贈与の非課税制度は、使い勝手は非常に悪いですが、高齢の祖父母が元気なうちに贈与をする、または、教育の為だけに使ってほしいと考えている場合には有効な手立てになります。
まだ、祖父母が若い場合は、都度贈与を使用して、援助を行うことがいいでしょう。
使用用途も制限をされずに、煩わしい手続きも不要になります。
ただし、生活費や教育費以外で贈与金を使われることが発覚した場合は贈与税の課税対象となります。
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