家族信託は、本人の財産を信頼のおける人に託す事でその効果は発生させます。
意思判断能力の低下に備えたり、遺言書以外での資産継承に備える事が出来ますが、それ以外でもメリットもデメリットも多くあります。
費用面でも成年後見人制度よりも安く使い勝手がいいので、近年ではこの制度を使う人も増えています。
家族信託については下記の記事で詳しく解説していきます。
家族信託のメリットとは、なにがあるのか?
家族信託には複数のメリットがあります。
・意思判断能力が低下した場合の財産の管理、運営、処分ができる
・成年後見人制度よりも使い勝手が良い
・障害、未成年などの子供に財産から生まれる利益を渡しやすい
・教育資金などの贈与にも使える
・自己破産しても財産が守られる
以上の5つがあります。詳細をお伝えしていきます。
・意思判断能力が低下した場合の財産の管理、運営、処分ができる
財産を所有している人の意思判断能力が低下した場合、財産を大きく動かすのが困難になってしまいます。
しかし、家族信託に財産を託していれば、信託契約の内容通りに、管理、運営、処分が引き続き出来ます。
・成年後見人制度よりも使い勝手が良い
認知症や意思の疎通ができない状態になった場合に、有名な制度が成年後見制度ですが、家庭裁判所の選任や判断が必要になるので、実際に財産を動かす事が難しいのが現状です。
しかも、意思判断能力がない状態になった後に選任がある為、本人の意思は全く反映されません。
家族信託の場合では、事前に信託契約の中で、財産の管理方法などを取り決める事が出来ますので、本人の希望が反映されます。
また、委託者、受託者、受益者の継承も事前に決める事が出来ます。
・障害者や未成年などの子供に財産から生まれる利益を渡しやすい
障害を持った子供や未成年の子供に対して、財産を一括で渡す事にリスクを感じる場合には、財産を管理する受託者を専任する事で、安定的な生活費の支給が出来ます。
生年やお金が必要な時には、財産を処分して渡す事も事前に信託契約で決められるので、自分が万が一があった後も安心する事が出来ます。
認知症の配偶者がいる場合にも、家族信託をする事で安定的に生活費を支給する事も出来ます。
普通に財産を残すよりも、融通が聞くので万が一に備えられます。
・教育資金などの贈与にも使える
教育資金のための一括贈与が家族信託でも出来ます。
金融機関などで、教育資金の1,500万円までの一括贈与商品が複数ありますが、家族信託で行えば、信託報酬などの手数料が必要ありません。
しかし、契約書の作成に法律家を使えば費用は発生するため、どちらが安いかは双方で見積もりを取得した方が良いでしょう。
・自己破産しても財産が守られる
信託された財産は、受託者の名義に変わるので、委託者が破産しても、債権者に財産を差し押さえされる心配はありません。
しかし、破産する事がわかっていて信託財産にした場合は無効になるので、注意が必要です。
家族信託のデメリットとは、なにがあるのか?
メリットが多い家族信託ですが、もちろんデメリットも多くあります。
・受託者を決めるのに揉める場合がある
・財産が受託者の名義に変わってしまう
・身上監護がない
・節税効果はあまり無い
・遺留分に関しては、正確に決まっていない
以上の5つのデメリットがあります。
・受託者を決めるのに揉める場合がある
受託者は大切な財産を預ける人になるので、身内の中でもかなりの信頼を置いている人に任せますが、その専任で身内の仲が悪くなるケースが多いです。
専任されなかった人としては、良く思わない人も出てくるでしょう。
また、複数の人を受託者にして多数決で管理、運用、処分を決める事ができますが、結果的に意見が合わずに何もできない状態になってしまうリスクも大きいです。
家族信託で受託者を確定する前に、他の身内ともしっかりと相談をしたうえで決めていく事が大切です。
・財産が受託者の名義に変わってしまう
不動産などは特に顕著ですが、法務局で管理している登記簿の名義が委託者から受託者に変わります。
実際の、所有権は変わりませんが、登記簿の名義が受託者の名前に変わる事に不安を覚える人が多いのは事実です。
財産を受託者に奪われるのでは?という認識がある人もいますが、所有権は委託者のままになりますのでご安心下さい。
・身上監護の手続きをする権利がない
身上監護とは、病気や怪我により入院する手続きの事を言います。
成年後見人と違い家族信託のメインは財産を託して管理することなので、委託者の手続きする権利が無いです。
もちろん、同居や血縁が強ければ問題ないですが、関係が薄い人の場合には、困る場合もあります。
・節税効果はあまり無い
家族信託の税金は、委託者ではなく受益者に課税されます。
委託者と受益者が同一であれば、所得税
委託者と受益者が別人であれば、贈与税
受益者が相続によって権利移動すれば相続税の対象です。
基本的には、家族信託での節税対策は向いていません。
特別な控除も無いです。
相続税の節税をするのであれば、別の方法で準備をする必要があります。
・遺留分に関しては、正確に決まっていない
家族信託で、相続財産を事前に渡す人を決めていた場合には、基本的には相続財産とは別枠での考えとなり、法定相続人の遺留分として見ないという意見が多いですが、逆に、遺留分の範囲内という専門家の意見もあります。
まだ裁判事例が少ないため、一概にどうなるとは言えませんが、今後、判決が増えていけばどちらかが正しくなるので動向に注意したいです。
家族信託が増える理由は何か?
家族信託には少なからず、デメリットがあります。
それでも、この制度を活用していく人が増えているのは、平均寿命が長くなっていることと高齢化社会が関係しています。
認知症になった場合には、財産はほぼ凍結されてしまうので、事前に対策方法を考えて、対策をしている人が増えているのです。
前述しましたが、後見人制度の場合では、認知症になった後の対策になり、家庭裁判所の許可がいる事も多く必要になります。
例えば、後見人制度で土地の売却を行う事は非常に難しいです。
また、自身の老化を気にされて、まだ元気なうちにしっかりとした財産の管理、運営、処分を任せていきたいと考える人が家族信託を使っています。
特に、経営者などに関しては、会社を継承するために活用もしています。
まとめ
家族信託では、メリットだけでなくデメリットもしっかりと把握した上で行う事が良いでしょう。
信託契約書も自身で作成し、締結する事も可能ですが、信託の運営中にトラブルになるケースもあります。
そうならないように弁護士や司法書士などの法律家に依頼し、トラブルの回避をしていく事も大切です。
家族信託をしたが、思った通りにいかないのでは委託者も受託者もお互いに損をします。
専門家に相談し、アフターフォローを受けながら行っていくことをオススメします。
家族信託に必要な費用と税金は下記の記事で詳しく解説しております。
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