相続税は相続が発生した事を知った翌日から10ヶ月内に手続きをする必要があります。
しかし、相続税を決めるためには、各相続人の相続する財産を確定する必要があります。
相続人の財産を決めることを遺産分割協議といいます。
この遺産分割協議がまとまらずに、10ヶ月の相続税の申告期間を過ぎた場合にどのようなデメリットがあるのかをわかりやすく解説していきます。
相続の手続きの流れと期間
被相続人が亡くなった際に、様々な手続きが必要になります。
税務署に提出する書類には、期限も決められています。
もちろん、それ以外にも大切な事がたくさんありますが、今回は税金と申告に絞ってお伝えしていきます。
簡単に流れの解説をしていきます。
①被相続人が亡くなる
②死亡届、葬式、火葬
③遺言書の確認
④対象になる法定相続人の調査
⑤相続財産の確認
(プラス、マイナス資産)
⑥相続放棄、限定承認
(期限相続発生を知った日から3ヶ月以内)
⑦準確定申告
(相続発生後4ヶ月以内)
⑧遺産分割協議
(開始はいつでもいいです)
⑨遺留分侵害請求権
(相続開始か遺留分の侵害があったとこを知ってから1年以内、
民放改正で遺留分減殺請求権から変更になっています。)
⑩相続税の申告、納税
(相続発生後から10ヶ月内)
また、相続の軽減措置の適用は相続税の申告後3年以内であれば可能です。
遺産分割協議とは
遺産分割協議は、各相続人が遺産を各自どれだけ相続するかをお互いに話し合う事です。
遺言があれば、遺言書に従って相続をするという選択もできます。
遺言がない場合には、分割協議を行う必要があります。
しかし、厄介な事に遺産分割協議自体には、期限が無いです。
対して、遺産分割協議後の相続税の申告、納税には10ヶ月内と期限があります。
遺産分割協議が終わらない事で、相続税の申告、納税期限を過ぎてしまうケースが最も多いです。
また、遺産分割協議の対象外になる資産もあります。
死亡退職金や生命保険の受取人に指定されているみなし相続財産は分割協議の対象にはなりません。
相続税の申告期限を過ぎるデメリット
相続税の申告期限を過ぎてしまう場合にデメリットは大きく2つあります。
1 税額控除が使えない
相続税の計算をする際に、節税に役立つ控除は複数あります。
例えば、配偶者控除ですが、配偶者の法定相続分か1億6千万円のどちらか大きい金額を非課税で配偶者に相続することができます。
また、小規模宅地等の特例であれば、特定の土地の相続評価額を最大で80%減額することができます。
この様な、相続税を大きく減らすことが出来る控除の使用が出来なくなります。
支払う税額は、資産によって累進課税でかかるため、控除を使えば100万円の納税で済んだ所が、極端に言えば1,000万円の納税に増えてしまうケースもあります。
配偶者控除と小規模宅地については下記の記事を参考にして下さい。
2 物納が出来ない
もう一つは、物納が出来ないですが、相続税は基本的には一括納税です。
どうしても、一括は難しい場合は、延納も可能で、延納も難しい場合は物納が選ばれます。
申告期限が超えてしまうと、この物納が選べません。
ただし、直近で物納がされる事はほとんどありません。
税務署は、預貯金などの資産も全て把握しているため、現金がある場合は全て納税にして下さいと言ってきます。
余程、現金がないか、返済する原資がない状況でなければ物納は現実的ではありません。
相続税申告が間に合わない場合の手続き
遺産分割協議は、お金が絡む事で決まりにくい事は、国税もわかっています。
もちろん、10ヶ月以内で終わることが望ましいですが、終わらない場合の特例も用意しています。
遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合で、10ヶ月を過ぎてしまう際には、
とりあえず、相続人の法定相続人で分けた財産の申告書と
申告期限後3年以内の分割見込み書という書類を
併せて税務署に提出し、控除を受けていない納税を行います。
これを行えば、遺産分割協議が3年以内に完了した場合は、遺産分割協議終了後4ヶ月以内に修正申告を行い、税金の還付をうけます。
遺産分割協議が3年10ヶ月以上かかる場合の対処法
相続税申告の延長の申告を行い、3年しても分割協議が終わらない場合は再延長する事も可能です。
もちろん延長するのにやむ得ない理由がある場合に限ります。
主な理由としては、裁判の決着がついてないことがあげられます。
ここまでの延長をしている場合だと、裁判で争っている可能性が高いです。
再延長する場合は、3年以内に遺産が未分割であることについてやむ得ない事由がある旨の承認申請書を税務署に出す必要があります。
延長が認められない状態で延長した場合は、控除は一切受けることができません。
まとめ
相続税の申告期限に遅れる場合は、一度、高い税金を納める必要があります。
もちろん、修正申告をすれば還付は受けれる可能性が高いですが、高い税金を支払うための原資も必要ですし、延長するのであれば裁判費用もかかってくる場合もあります。
結果的に、揉めた場合には損をする可能性が高いです。
そうならないためにも、普段からの話し合いを大切にしていきましょう。
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