不動産アパートの【相続税対策が無効に?】相続評価額を地裁否定判決

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2019年に不動産の相続評価を根本から覆す判決がありました。

相続税の節税対策で、土地建物アパートを購入した被相続人の相続評価額に、地裁が相続評価でなく実勢評価で財産の査定を行い、修正申告を行う判決を出しました。

詳しい事実関係

悩んでいる老夫婦

賃貸不動産2か所、8億3千万円、5億5千万円、合計13億8千万円を相続対策で相続発生の数年前に購入しています。

購入資金は銀行からの借り入れをしています。

銀行内での審査稟議には「相続税対策の為ローンを実行して不動産を購入する」と申請されており、融資実行の時に本人は、90歳を超えていました。

相続税申告時に、不動産評価額を評価通達と小規模宅地等の特例を適用し、2か所の不動産で合計3億3千万円として申告しています。

さらに、借入金が約10億円あるため、2か所の不動産で約7憶近い負債が出るために、他の相続財産と合わせても相続税の控除内におさまり、相続税はゼロ円と申告していました。

そして、不動産を相続した一部の人が、相続9か月後に1か所の不動産を5億1千万円で売却しています。

税務署は国税庁長官の指示により、伝家の宝刀とも言われる財産評価通達第6項を適用し、評価通達で、
当該財産の評価が著しく不適当だとして、改めて不動産鑑定評価を行うことを指示していました。

不動産鑑定士による、鑑定では2か所の適正評価額は7億5千万円と5億2千万円の合計12憶7千万円になるとして更正処分をしています。

地裁判決の要旨

租税負担の実質的な公平を著しく害することが一般的に見て明らかにおかしい場合には、評価通達以外の鑑定士などの合理的な方法で再評価することが認められます。

税対策を行っていない他と著しく剥離している場合はという意味ですが、著しくに明確な基準が無い為、判断が難しいところになります。また、今回に関しては、鑑定評価額と相続評価の差が4倍近い違いがあります。

また、被相続人は融資実行時に90歳だったが、多額の借入を元に賃貸不動産を購入している。その目的も銀行の稟議書には相続税対策である事が申請書より明らかになっている。

元々、6億円を超える相続財産を所有していたが、購入した賃貸不動産を評価通達通りに評価減額を行い、相続税負担逃れをしたと地裁は認めています。

よって、地裁は不動産鑑定価格での評価をすることで、税務署側の言い分を認めています。

また、購入額や売却額は、いずれも不動産鑑定評価額に近似していることから、不動産鑑定評価額は適切な時価であることが裏付けられていると主張する。

まとめ

これは不動産業界ではかなりショックな内容になります。

相続対策で、アパートを建築しているオーナーに対しても波及しそうな判決になります。

しかし、判決はあくまで地裁での判決なので、今後、高等裁判所・最高裁判所での判決によって決まります。

今回の件が、認められた場合、相続税の修正申告を余儀なくされる家庭はかなり増えます。

今回の判決で国税は相続税の申告漏れにあたると指摘し、相続人全体に合計で約3億円の追徴課税処分をしています。

相続税を支払う家庭は全体の8%程ですが、今回の様に相続税を無税にする為に対策をする家庭が多いので、実際は納税する家庭はもっと多くなります。

一つの、大きな対策だけではなく、複数の対策方法を行い、時間をかけて相続対策や税金対策を行うことが大切なこととなります。

短時間で、無理矢理に節税対策を行うことで、今回の様な判決になる場合があります。

90歳という年齢での、新規事業も一般的に考えれば無理があります。

いくら認知ではない、本人の意思といっても早急すぎるため、早くからの対策を心掛けましょう。

今回の裁判の
もう一つの問題点は、相続後にすぐに売却をしているので、国税局も相続評価と実勢売買の金額の剥離が酷すぎて伝家の宝刀を抜いたのでしょうが、このまま、裁判で負けても、相続後で直近で売買をすると評価額の見直しがあるという判決に落ち着いてほしいです。

・相続について
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